音のない世界に生まれた猫　知らない猫の死

ももたすとの出会い

ももたすとの出会いには　ほんの少し長いプロローグがあります。

ある晩遅く　車で帰宅中　目の前に白いものが。

車を停めて見てみると　それは真っ白な　ちいさなちいさな子猫でした。

もともと　動物に触るのもダメな私でしたが　あまりの交通量の多さにとまどい　とっさに子猫を抱えて歩道に避難させました。

にゃあ　にゃあ・・・と鳴くそのか細い声は　だんだんと小さくなっていきます。じっと眺めていると目もうつろになってきて　おしっこが漏れてきました。よく見るとお腹から下が　ぴくりとも動いていません。

まずいと思いながらもどうすることもできず　そのまま子猫は私の目の前で息をひきとりました。
ごめんなさい。そのまま私は逃げて帰ってしまいました。

もともと　まともに動物を飼ったことがない私にとって　生き物の死を目の前にすることは　ちょっと衝撃的な出来事でした。数日の間　もやもやした気持ちの悪い日々を過ごすことになりました。

ある日　少し嫌な夢を見ました。あの白い子猫が出てきて　じっとこちらを見つめるのです。何も言わず　ただじっと。それはやさしいとか　かわいいとか　感謝とか　憎しみとか　苦しみとか　そういった全く感情のない　なんともいえない　無機質な感覚をおしつけられる夢でした。

そんな夢をたびたび見るようになりました。

それからというもの　毎日頭の中に白い子猫がでてきます。

ちょっとまって！別に悪いことしたわけじゃないよ？ちゃんと歩道に避けてあげたし　看取ったし。

あのまま車道にいたらもっとヒサンだっとよ？確かに　そのまま放って帰ったのはゴメン。

でもいつも頭の中に出てくるのは反則じゃない？

友達にも相談しました。そしたら　やっちゃいけないことやってしまってて・・・。

白い子猫を車道に避けたとき　写真撮ってました。もちろん死ぬ前ですよ。それを消してなくて。

友達に「すぐに消せ！そういうことしたらいかん！」って言われて。すぐに消しました。

ああいうのって　着いてくるのかな？ちょっと怖い。

画像を消したあたりから　少し気持ちも落ち着いて　普通の生活に戻れました。

でも　猫という動物の存在に　ちょっぴり不思議な気持ちが生まれてきたのもこの瞬間からでした。

白い子猫。まだ出てくるんです。夢に。

でもなんか前と違う。あんまり怖くない。

「猫もけっこう　いいもんだよ？」みたいな感覚？

そういえば猫ってあんまり触ったことないな。毛とか汚いんじゃないかな？お尻も自分でなめるんでしょ？

でも世間では　モフるとかいって顔をうずめたりしてるし。どちらにしても　うちは奥さんが動物飼うの反対だろうし。息子は超アレルギー体質だし。

何より家計が許さない。

でも少し触ってみたいな。最後に触った猫があの白い子猫　っていうのもなんか嫌だし。

調べてみたら　猫カフェとかすごく高いですよね。どこかタダで猫を触らせてくれるとこはないんかな。